富山市のコンパクトなまちづくり

city雑学
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人口減少の危機感がようやく社会で共有されるようになってきた昨今ですが、それにいち早く気づいて対策を取ってきた地域もあります。

富山市はその一つで、二十年に渡ってコンパクトなまちづくりを進めてきた実績があります。

先日、その富山市の森市長が大学に講演に来ていただく機会がありました。そこでのお話の内容が興味深かったので、概要を紹介します。

京都大学の地球工学科に興味がある高校生なら、大学で勉強する内容のイメージを掴むのにもいいと思います。

(ただ、ぼく自身は富山市に言ったことがないので、うっすいないようになっていることはご了解を m(__)m )

1.基本姿勢―コンパクトなまちづくり―

人口減少に対応するための対応策として、街のコンパクト化を進めるべきだというのが富山市の基本方針です。

ではどうしてそのような考え方が出てくるのか?ご存じの方も多いと思いますが、一応説明しておきます。

高度経済成長期は人口が増え、マイカー・マイホーム志向が高まった時期でした。そうして郊外への居住が進んだわけですね。この時代の都市計画は、拡散型のまちづくりと表現できます。

そうすると郊外にも役所の出張所を作ったり、水道管を通したり、道路を敷いたり、電気・ガスを供給したりと様々なサービスを提供する必要があります。また、ごみ収集の範囲も広くなりますし、雪国では除雪作業の大変さも増します。これはかなりコスト的に大変なことです。

ぼくのいる学科ではこう言うことを勉強しているので、この問題の深刻さが何となく分かります。

人口が多かったころはそれでも成り立っていました。

しかし、日本の人口は2008年を境に減少に転じました。人口が減ってくると、上で触れたようなインフラ等の維持がきつくなってきます。かかる費用は変わらない一方で、その費用を負担する人数が減りますから。

そこで、中心部に人を集めて、コンパクトな街として、コスパを良くしようという発想が出てくるわけです。

現富山市長の森氏はこれを基本構想として、基本構想を実現するために以下のことに取り組んできたと仰っていました。その取り組みとは、

①公共交通の活性化
②中心市街地の活性化
③種々のサービスの充実

という三つです。ではそのそれぞれのテーマに移りましょう。

2.公共交通の活性化

かつて富山市は地方でよくあるように、車社会でした。(今もそうだと市長は仰っていました。)

住宅地域、店、病院、学校、行政施設などが互いに離れて、低密度で立地しているので仕方がなかったのです。

しかし、車依存の状況は公共交通を弱くしてしまっていたようです。

コンパクトな街づくりにおいては公共交通が大事です。みんなが車を使っていたら、コンパクトになりませんからね。

そうして公共交通の充実が進められました。

その中の目玉と言うと、やはり路面電車の整備でしょう。

この路面電車は富山ライトレールと言うようで、富山駅を中心地として市内をつないでいます。

これのすごいところは、乗り換えの接続性が高いところでしょう。新幹線からの乗り換えも楽楽です。路面電車を降りればすぐに、新幹線の改札という近さだそうです。

その他の事業としては、鉄道の高架化、駅の新設などもあるようです。

こうした取り組みで富山市民の公共交通への親和性が上がったのか、路線バスの利用も増えてきているそうです。

また、公共交通機関で来れば、中心市街地での回遊時間が増えたり、アルコールを楽しむ人が増えたり(車の運転がないですからね)と、経済的な効果も確認されているそうです。

3.中心市街地の魅力向上

コンパクトな街づくりを進めるにあたって、中心市街地の魅力は重要です。そこに人を集めるわけですからね。

その人を集めるコツについて、市長はこんなことを言っていました。

「楽しい、おいしい、おしゃれ」の三要素が大事だと。

なるほど、その通りだなと思いましたが、語呂がイマイチなのが惜しいポイントです。

まぁそれは置いといて。

「楽しい」という環境を作るために市長がしたことの具体例は、富山駅前の多目的イベント広場の整備です。この空間を活性化するために、市が土地の権利を持って、たくさんの人が使いやすいようにしているとか。

中心地の広場なので、土地の資産価値は高いはずです。ここを売りに出せば、かなりの利益がでるでしょう。けれどもそうはしなかったということでした。

そこへ路面電車の停車場所を作って、アクセスを良くするということもしていました。

「おいしい」という要素は言い換えれば、「お得感」や「便利感」ということです。

これの具体策には、お出かけ定期券事業や自転車の共同利用システムがありました。

お出かけ定期券事業と言うのは、高齢者が市中心部に出かける際に公共交通を格安で利用できるようにするシステムです。高齢者が中心地に行く機会を持つことで、健康面、ひいては医療面にもポジティブな効果が認められたとか。

孫と一緒に対象の施設を訪れると、入場料が無料になるという取り組みとの相乗効果も興味深いものでした。孫と一緒に行けば、おじいちゃんおばあちゃんの財布のひもが緩くなるというわけです。

自転車の共同利用システムは他の場所でもあるので、皆さんもご存じだと思います。

こうした環境があるので、富山市中心部では車は要らないと市長がおっしゃっていました。

ただ、難しさもあるでしょうね。

自転車の共同利用サービスを先進的に導入している中国では問題が発生しているようです。富山でも同様の課題がある気がします。それに、お出かけ定期券を導入しようとした他地域では導入に失敗したという話もありました。富山でも導入するのは大変だったことだと思います。

そして三つ目の要素「おしゃれ」。

ここも市長がかなり力を入れたところのように見受けられました。

隈研吾さん設計の建物を立てたり、 アメリカで初めて人間国宝に選定されたアーティストのデイル・チフーリ氏に作品制作を依頼したり、花にあふれた空間を演出したり、路上にピアノを設置したり……と。

本当に多岐にわたっています。

それにそのどれもが中々お金のかかることで、市長もよく思い切ったものだと思います。それに議会もよく承認したなぁとも思いますね。

何てったって、隈研吾さんの設計やデイル・フリーチさんの作品にはそれぞれ数億円がかかっていますし、路上に花を配置する取り組みには年間六千万円以上かかっているとか…。スケールがでかい…。

それだけのお金をかけても進めるべきだと市長は考えているようですね。上質な空間を作ることは、人を呼び込むにあたって強力な武器だという考え方です。

4.種々のサービスの充実

種々のサービスと書きましたが、これが本当に多岐にわたっていて、書くのも大変です。

ですので、簡略に書くことをお許しください。

例えば、行政サービスの充実です。出張所のような小さな行政施設をたくさん配置することで、市民の多くが行政施設の近くに住むという状況を実現しているらしいです。

中山間施設、つまり田舎地域への支援もありました。市長は中心地域偏重というわけでは決してないようです。静かな暮らしをしたいといった価値観を尊重しているようでしたし、農業による防災効果なども重視されているようでした。

また、高齢者へのサービスもハイレベルなものです。かなりレベルの高い施設を作ったり、先に触れたお出かけ定期券を導入したり、色々と取り組んでいるようでした。

子育て支援にも力を入れていました。産後うつを防ぐための施設を安くで利用できるようにしたり、体調を崩した子どもを一時的に預かる施設を作ったりという感じです。

あとがき

このように精力的に様々な施策を実行してきた富山市ですが、人口の減少は抑えられていません。

もちろん、効果が出ていないわけではないのです。

中心地域に人が集まってきて、コンパクトシティ化は進んでいますから、確実に目標に向かってはいます。

富山市は魅力のある地域だと認められているのでしょう。

しかし、そんな富山市でも人口減少が抑えられていません。対策の進んでいない他の地域ではどんな酷いことになっているか……。

そう考えると不安になって来ます。うちの地元は大丈夫なのかなぁと思ったりしますねぇ。

見出し画像:City vector created by rawpixel.com – www.freepik.com

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